パウロ・コエーリョ 「11分間」
ブラジルの児童文学作家パウロ・コエーリョ(日本語公式サイト)の「11分間」を読んだ。児童文学作家と言っても、最近は妻子を殺された元武器商人の男の話だったりと、おとぎ話でもシリアスなおとぎ話が多かった。だが、今回の話はモデルにならないかと騙され、海外に出てその後娼婦として働くブラジル人女性の話。といってもどうしても働かなければならなかった、というわけではなく、なんとなくプライドの問題で故郷に帰るに帰ることができず娼婦になってしまったという話。それにしても一番驚かされたのは、サディズムに関する問題まで深く取り上げていること。どちらかと言えば、今まではハリーポッターとか「はじめてのお使い」のようなかわいらしい話ばかりだったので、筆者も今回相当な覚悟があったようだ。例えば最近コエーリョは「ありがとう、ブッシュ大統領」という声明を2003年に出している。彼の中で「痛み」というものに関する考えが、SEXも含め色々な面で変化していったのかもしれない。
SEXという、どうやって異なる要求を満たすのかを考えなければいけない、そういうテーマだから、単純に飛躍してメルヘンで終わり、という結末にすることができない。どちらかだけ満足しようとするともう一方が満足できないといったことが、今までも常に問題にされてきたことだから、そこをどう書くのか興味を持ちながら読み進めていった。普通に考えれば、たった数ヶ月の間のSEX経験がここまで主人公に成長をもたらすなんて、ほとんど作り話としか考えられないけれど、各国でベストセラーになって幅広い層に支持されているだけあって、パウロ・コエーリョはなかなか読ませるんですよ。実際に娼婦として働いている読者にきちんとリサーチしたって後書きで書いてあるだけあって。
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